「英語版のホームページを作りたいんです」
海外に工場を持つ、精密部品をつくる会社からの相談でした。
営業の方の言葉は、こうでした。
「グーグルの翻訳でいけるんじゃないでしょうか」
その直感は、半分正しい
まず、この会社の営業の方の感覚は当たっていました。
日本語のサイト経由で、海外から月に数件の問い合わせが来ていたのです。9割は売り込みで無視するようなものですが、1割は本物の引き合いでした。事例を見て、相談相手を探して、秘密保持契約を結んで、図面が届く。
「もっと取れるはずだ」という直感は、正しい。
間違っていたのは、そのあとの一手でした。
翻訳ボタンでは、検索に出ない
翻訳ボタン方式には、決定的な弱点があります。
訪問者がボタンを押して、初めて翻訳が走る。
つまり、検索エンジンが見に来た時点では、そのページは日本語のままです。英語のページは、この世に存在しないことになっている。
だから、英語で検索しても永久にヒットしません。
これは翻訳の品質の話ではありません。仕組みの話です。どれだけ良い翻訳を載せても、押されなければ存在しないのです。
目的は「作ること」ではない
ここを取り違えると、半年を失います。
目的は英語版を作ることではありません。英語で検索されて、問い合わせが来ることです。
翻訳ボタン方式を「安くて速いですよ」と売って、半年後に「問い合わせ、増えませんね」と言われる。よくある話です。売った側は嘘をついていない。でも、目的は果たせていない。
3つ並べて、順番を決めた
だから私は、3つの方式を並べて見せました。
| 方式 | 費用 | 検索に出るか |
|---|---|---|
| 翻訳ボタン | 安い | 出ない |
| ページごとに英語URLを作る | 中間 | 出る |
| 全部を人手で仕上げる | 高い | 出る |
そのうえで、順番を勧めました。
まず安く英語化する → 特定の国に絞って広告を出す → 反応があれば本格版に進む
いきなり一番高い方式に投資しない。市場の反応を見てから、次を決める。小さく試して、当たったら広げる。
もうひとつ、大事な提案をしました。日本語のページをそのまま訳すのではなく、英語で実際に検索されている言葉を先に調べて、それに合わせて設計する。
日本語で強い言葉が、英語でも強いとは限りません。むしろ、ずれていることのほうが多い。
結果は、真ん中の方式で決まりました。いまその会社の英語版サイトは、納品を目前にしたところまで来ています。
もうひとつ、効いたこと
この案件では、打ち合わせに営業の方だけでなく、社内のシステム担当の方にも入ってもらいました。
営業の方は「簡単な方法は?」と聞く。システムの方は「検索対策はどうなりますか」と聞く。
視点がぶつかることで、検討が深くなりました。
最初は手間に感じます。でも、片方だけで決めた案は、あとで必ず揺り戻しが来ます。
今日からできる一歩
海外向けに何かを始めるなら、「英語で何と検索されているか」を先に1つだけ調べてください。
自社の商品を英語で言うと何になるか。その言葉は、月に何回検索されているか。
作る前に調べる。この順序を守るだけで、無駄な投資が減ります。