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「値段で負け続けています」と書いたら、受注が決まった

「値段で負け続けています」と書いたら、受注が決まった

相見積もりで、値段で負ける。悔しいので次は安く出す。すると今度は「この金額で本当に大丈夫ですか」と疑われる。安くしても負ける。この繰り返しに入っている会社は、けっこう多いと思います。

先日、ある製造業のサイトをつくり直す仕事が決まりました。工場で使う型をつくっている会社です。こちらの見積は、他社が出すと想定される金額より3割ほど安いものでした。普通なら疑われる金額です。それでも決まりました。

何をしたか。メールの1行目に「値段で負け続けています」と書きました。

今日はこの話を書きます。

  1. 安い見積は、黙って出すと疑われる
  2. 私が書いた3つのこと
  3. なぜ、弱みを先に出すと通るのか
  4. 紹介してくれる人には、説明しやすい材料を渡す
  5. 今日からできる一歩

安い見積は、黙って出すと疑われる

当時、私は値段で連続して失注していました。正直、焦っていました。

その状態で、他社より3割安い金額を出す。相手の立場で考えてみてください。「なぜこの会社はこんなに安いのか」。浮かぶ答えは2つです。ひとつは「安くできる工夫がある」。もうひとつは「手を抜くつもりだ」。

黙って安い金額だけ出すと、相手は後者で考えます。これは相手が疑い深いからではありません。理由が書いていないからです。人は、説明のない安さを警戒します。スーパーで極端に安い肉を見たときと同じです。

私が書いた3つのこと

1.「このところ、値段で負け続けています」

いちばん言いたくないことを先に書きました。かっこ悪い話です。でもこれを書くと、次の金額の説明が「言い訳」ではなく「事情」として読まれます。

2.「安くできる理由は、作り方を変えたからです」

ここは具体的に書きました。1つのサイトに4〜5人を入れていたのを、2〜3人に減らしました。毎回ゼロから考えていた作業を型にはめました。下作業はAIにやらせるようにしました。

「効率化しました」とは書きません。何人が何人になったのかを書きます。桁が出ないと、人は信じません。

3.「品質は変わりません。作り方を変えただけです」

最後は言い切りました。「変わらないと思います」ではありません。「変わりません」です。ここで濁すと、1と2がすべて無駄になります。

なぜ、弱みを先に出すと通るのか

相手がいちばん怖いのは、安い金額そのものではありません。あとで何かが出てくることです。追加費用、手抜き、途中で音信不通。だから相手は「この会社は何を隠しているか」を探しています。

こちらが先に、いちばん都合の悪いことを出す。すると相手の探す作業が終わります。隠しごとを探す相手から、一緒に考える相手に変わります。

この案件では、相手の担当者の方から「正直に言ってくれたのがすごく嬉しい」という反応をいただきました。安い金額への不信ではなく、共感になった瞬間です。

紹介してくれる人には、説明しやすい材料を渡す

もうひとつ、この案件でやったことがあります。紹介してくれた人が社内で説明しやすい形にして渡したことです。

理由を5つ並べませんでした。2つに絞りました。人数を減らしたこと、型にはめたこと。この2つだけです。

紹介者は、私の代わりに社内で説明してくれる人です。その人が覚えられない説明を渡しても、伝わりません。2つなら覚えられます。5つは無理です。結果として、このメールは1か月後の打ち合わせまで材料として使われ続けました。

変える前と、変えた後

  • 安い金額だけを出す → 負けている事実を先に出す
  • 「効率化しました」と書く → 「4〜5人を2〜3人にしました」と書く
  • 「品質は落ちないと思います」 → 「品質は変わりません」
  • 理由を5つ並べる → 理由を2つに絞る

今日からできる一歩

次に見積を出すとき、金額の前に1行だけ足してください。

この金額にできる理由は、◯◯を◯◯に変えたからです。品質は変わりません。

◯◯には、必ず数字を入れてください。人数、工程の数、日数。何でもいいですが、桁を出します。「安いですが大丈夫です」は、何の説明にもなっていません。

そして、いちばん都合の悪いことを1つ、自分から先に言ってみてください。負けが続いていること。人手が足りないこと。得意でない分野があること。隠しても、相手はいずれ気づきます。先に言えば材料になり、あとで出れば裏切りになります。同じ事実です。順番だけが違います。

測っても判断が変わらないなら、その数字は要りません

測っても判断が変わらないなら、その数字は要りません

先日、ある社長からメールをいただきました。小売店向けに商品を卸している、通販のサイトを持っている会社です。

相談はこうでした。

「広告のうち、どちらが効いているのか分からない。会員登録したお客様が、どの広告から来たのかを自動で記録する仕組みを入れたい。見積を取ったら、広告の月額と同じくらいの金額になった。これはやるべきか」

数字で判断したい、という姿勢は正しいです。私はこの社長を尊敬しています。 ご自身で分析まで踏み込む社長は、そう多くありません。

それでも私は、「今はやらないほうがいい」と答えました。金額が高いからではありません。

私が聞いたのは、ひとつだけ

返信で、質問をひとつしました。

「その広告の成績が低いと分かったら、何をされますか」

社長の答えは、はっきりしていました。その広告を減らして、別の広告に予算を移す。理由は3つ。

  1. 別の広告の獲得単価が上がってきている
  2. 今すぐ買いたいお客様を、他社に取られている懸念がある
  3. 主力とは別の事業が落ちていて、投資先を絞る必要がある

読んですぐ分かりました。この3つは、どれも「広告の成績」と関係がありません。

成績が高くても低くても、この社長は予算を移します。つまり、測っても判断は変わらない。

その瞬間、仕組みを作る費用が丸ごと不要だと確定しました。

数字が要るのは、「決め方が数字で変わるとき」だけ

私たちは、数字があれば正しく決められると思い込んでいます。

違います。先に決め方が決まっていないと、数字は使えません。

順番はこうです。

  1. 何を決めたいのか
  2. どういう数字が出たら、A。どういう数字が出たら、B
  3. その数字は、いくらで手に入るか
  4. 3が高すぎるなら、そもそもその決め方をやめる

多くの場合、1と2を飛ばして3から始めます。だから、集めた数字が使われないまま残ります。

社長室のパソコンに、誰も見ていない管理画面がありませんか。私の会社にもありました。

紙に2行、書くだけです

やり方は簡単です。会議の前でも、見積を取る前でもいい。紙に2行書くだけです。

・この数字が目安より上だったら、私は___する
・この数字が目安より下だったら、私は___する

2行の___が同じ言葉になったら、その数字は要りません。測る必要がありません。

これは、うちの会社でも使っています。新しい道具を入れるか迷ったとき、広告を止めるか迷ったとき、外注先を変えるか迷ったとき。2行書くのに3分かかりません。

もうひとつ。その前提、本当ですか

この相談には続きがあります。

社長は「登録から1か月を過ぎたお客様は、ほとんど買わない」という前提で話をされていました。だから早く広告を絞りたい、と。

私の手元の数字は違いました。登録から7日以内に初めて買う方が46.4%、30日以内で69.6%。つまり、30.4%は30日を過ぎてから初めて買っています。 3人に1人弱です。

ここで「間違っています」とは言いませんでした。断定すると、人は守りに入ります。

代わりに、こう書きました。「私の手元の数字と実感が違うので、一度確かめてみていただけますか」

社長はご自身で確認され、すぐに返信をくださいました。「1年を過ぎるとほとんど買わない」を、「1か月」と見間違えていたとのことでした。

自分で気づいて、自分で直す。いちばん強い直り方です。

もし私が「それは違います」と押していたら、たぶん話は長引いていました。

順番だけ、入れ替えた

最後にもう一つ。この社長は、こういう順番を考えていました。

  1. 広告を絞る
  2. お客様を育てるメールを始める
  3. サイトの中身を増やす

私は、1番と2番を入れ替えることを提案しました。

理由は単純です。その広告は、会員登録の3〜4割を生んでいます。 先に絞ると、育てるメールを送る相手が減ります。すると、2番の効果が出たのか出ていないのか、分からなくなります。

先に2番を1〜2か月動かす。30日を過ぎてからの購入が伸びるかを見る。それから1番を決める。

お金は一円もかかりません。順番を入れ替えただけです。

今日からできる一歩

いま、調べようとしていること・測ろうとしていることを1つ思い浮かべてください。

紙に2行書いてください。

・上だったら、私は___する
・下だったら、私は___する

同じ言葉になったら、やめてください。そのお金と時間は、別のことに使えます。

1ページで売るのは、1つの商品だけ

1ページで売るのは、1つの商品だけ

先日、ある機械メーカーさんのホームページの打ち合わせに出ていました。

新しいトップページの案を見ていただいたときに、ブランドを見ている責任者の方から、鋭い指摘がありました。

「ここ、2つの製品の特徴が混ざっています。これだと誤解されます」

図星でした。私たちが作った案は、「Aができます」「Bもできます」「Cにも対応します」と並べていたのです。A・B・Cは、それぞれ別の製品の得意技でした。

作り手は「全部見せたい」、読み手は「自分の話か」しか見ていない

作る側の気持ちは、よく分かります。せっかく強みがいくつもあるのだから、全部見せたい。どれかが刺さるかもしれない。

でも、読み手はそう読みません。

読み手が知りたいのは一つだけです。「これは、自分の困りごとを解いてくれるものか」。

複数の製品の特徴が混ざったページを読むと、読み手の頭の中では一つの商品にまとまってしまいます。実際は別々の製品なのに、ひとつの万能商品だと思われるのです。

混ぜると、何が起きるか

問い合わせは増えることがあります。ただし、噛み合わない問い合わせです。

  • 「御社のこの機能、うちのこの用途に使えますか」と聞かれる。ところが、それは別の製品の機能
  • 説明の電話をすると「あ、そういうことですか」で終わる
  • 見積まで進んでも、途中で前提が違うと分かる

この対応は、全部こちらの持ち出しです。社員5人、10人の会社で、こういう問い合わせが週に2件あったら、それだけで半日が消えます。

しかも、断るときに相手に嫌な思いをさせます。ホームページを読んで期待して連絡してくれた人に、「それはできません」と言うのは、こちらもつらい。

間違った期待を持たせたのは、こちらのページです。

数を減らすのが怖い、という壁

ここで多くの社長が止まります。「載せるものを減らしたら、問い合わせが減るのでは」

私も同じ心配をします。だから、減らすのではなく分けると考えてください。

1ページで売るのは1つ。もう一方は、小さな入口だけ置いて、専用のページに送る。なくすのではなく、置き場所を変えるだけです。

今回の打ち合わせでも、この形に決めました。

  1. トップページの説明は、主力の製品1つに寄せる
  2. もう一方の製品は、小さな案内から専用ページへ送る
  3. 専用ページでは、その製品の話だけを思いきり書く

「思いきり書く」ができるのは、分けたからです。混ぜていると、どちらの説明も中途半端になります。

商品の呼び方も、混ぜない

同じ打ち合わせで、もう一つ指摘がありました。同じ製品を指す言葉が、ページによってバラバラだったのです。

製品名として使う表記と、一般的な呼び方が混ざっていました。社内では通じます。読み手には通じません。

これは、うちの会社でも起きます。「サイト」「ホームページ」「ウェブ」を混ぜて書いている資料が今もあります。書いた本人は同じものを指しているつもりでも、読んだ人は「別のサービスの話かな」と考えます。

呼び方は、1つの商品につき1つに決めてください。決めたら、一覧にして社内に配ってください。これは今日できます。

変える前と、変えた後

変える前

  • 1ページの主役は、商品A・B・Cの全部
  • B・Cも同じページに混ぜて説明する
  • 商品の呼び方はページごとにバラバラ
  • 問い合わせは多いが、噛み合わない

変えた後

  • 1ページの主役は、商品Aだけ
  • B・Cは小さな入口だけ置き、専用ページで思いきり説明する
  • 商品の呼び方は、1商品につき1つに固定する
  • 問い合わせは減ることもあるが、話が早い

問い合わせの数が減っても、噛み合う数が増えれば、社長の時間は増えます。 中小企業にとって、社長の半日は広告費より高い資源です。

今日からできる一歩

自社のホームページのトップページを開いて、書いてある「できること」を紙に書き出してください。

そして、その横に「どの商品の話か」を書いてください。

2つ以上の商品名が並んだら、そのページは混ざっています。主役を1つ決めて、残りは専用ページに送ってください。

作り直しは要りません。並べ替えと、リンク1本です。

いいものですよ、は届かない。人が動くのは困っているときだけです

いいものですよ、は届かない。人が動くのは困っているときだけです

先日、付き合いの長い制作会社の社長と飲んだときのことです。

仕事の話になって、最近の道具の使い方を聞いてみました。驚いたのは、毎日の転記作業がまるごと消えるような連携の仕組みを、一つも使っていなかったことです。

私は思わず、いかに便利かを話し始めました。

その社長の反応は、こうでした。

「へえ。まあ、今ので足りてるんですよ」

良いものを説明しても、人は動かない

帰り道に考えました。私の説明が下手だったのか。違います。その社長は、困っていなかったのです。

転記作業は毎日ある。でも、それは20年前からある。もう手が覚えている。だから「手間」として認識されていない。存在しない痛みに、薬は売れません。

これは相手が鈍いという話ではありません。私も同じです。人は、困っていないことには一円も出しません。

「いいものだから売れる」という思い込み

私は2002年に会社をクビになって、翌年に独立しました。月商8万円で、病院からは入院を勧められる状態でした。

そのとき何をしていたか。自分ができることの説明です。ホームページが作れます、こういう技術があります、安くできます。全部、自分の話です。

1件も決まりませんでした。2週間、ゼロです。

変わったのは、相手の困りごとから話を始めたときでした。840円のFAX代で16社に送って、64万円の受注になりました。文面に書いたのは、自分ができることではありません。相手が今、困っているであろうことです。

困っていない人に売ると、売ったあとも苦しい

もう一つ、大事なことがあります。

困っていない人に、押し切って売ったとします。すると、こうなります。

  • 使われない
  • 成果が出ない
  • 「あれ、どうなってるの」と言われる
  • 説明と対応に時間を取られる

売上は立ちますが、利益は残りません。困っていない人への販売は、売ったあとにコストが来ます。

逆に、困っている人に売ると、勝手に使ってくれます。こちらが言わなくても成果が出ます。紹介もしてくれます。同じ売上でも、あとの手間がまるで違います。

変える前と、変えた後

変える前

  • 最初の一言は「うちはこういうことができます」
  • 話す順番は、自社の良さが先、相手の状況は後
  • 相手の困りごとが出てこないときも、それでも良さを説明する

変えた後

  • 最初の一言は「いま、いちばん手間がかかっているのは何ですか」
  • 話す順番は、相手の困りごとが先、自社の良さは後
  • 相手の困りごとが出てこないときは、その日は売らない。困ったときに思い出してもらう位置に置く

「その日は売らない」が難しいところです。目の前に相手がいると、何か売りたくなります。私も毎回そう思います。

でも、困っていない人に費やした30分は、困っている人に会う30分を奪っています。

困りごとは、聞かないと出てこない

もう一つ、現場でよくあることです。

社長本人が、自分の困りごとを言葉にできていないことがあります。「特に困っていません」と言いながら、話を聞いていくと、毎月3日間かけて手で集計している作業が出てきたりします。本人にとっては当たり前なので、困りごとに数えていないのです。

だから、聞き方はこうします。

  1. 「いちばん時間がかかっている仕事は何ですか」
  2. 「それは月に何時間くらいですか」
  3. 「それがなくなったら、その時間で何をしますか」

3番目まで聞くと、相手の中で初めて「損している」という形になります。困りごとは、発見された瞬間に困りごとになります。

ここまで来て初めて、こちらの話をします。順番を逆にすると、同じ話がただの売り込みになります。

今日からできる一歩

次の商談で、最初の5分、自分の会社の話を一切しないと決めてください。

代わりに「いま、いちばん手間がかかっているのは何ですか」と聞いて、出てきた答えをメモしてください。出てこなかったら、月に何時間かかるかまで聞いてください。

それだけです。資料も、新しい商品も、値下げも要りません。話し始める場所を変えるだけです。

1件いくらまで払えるか。それを決める前に広告を出すな

1件いくらまで払えるか。それを決める前に広告を出すな

今日は、電卓を1つ用意して読んでください。3行の計算をします。

「広告、やったほうがいいですか」

この質問を、毎月のように受けます。

私の答えはいつも同じです。「1件の注文で、いくらまで払えますか」

たいてい、答えが返ってきません。「やってみないと分からない」と言われます。

逆です。やってみる前に決めるものです。これが決まっていないと、広告が高いのか安いのかを判断できません。判断できないから、1か月で止めるか、何も分からないまま垂れ流すかのどちらかになります。

計算は、3行で終わります

先日、印刷物のデザインを請け負う会社から相談を受けました。検索からのアクセスが落ちて、「サイトを作り直すしかないのか」で止まっていた会社です。

最初にやったのは、この3行の計算でした。

  1. 注文1件で、いくら売れるか(平均の注文金額)
  2. そのうち、いくらが手元に残るか(粗利)
  3. 手元に残るお金の、何割までなら広告に出せるか

この会社は、1件の注文でおよそ10万円が手元に残る商売でした。その3割までなら出せる、と決めました。

すると、1件の注文を取るのに3万円台まで払えると出ます。

この数字が出た瞬間、話が変わりました。クリック1回に300円かかっても、100回クリックされて1件注文が取れれば、3万円です。十分に戦えます。

逆に、1件の注文で手元に5,000円しか残らない商売なら、1件を取るのに3万円は絶対に払えません。同じ「クリック300円」でも、答えが正反対になります。

高いか安いかは、広告の側では決まりません。自分の商売の側で決まります。

大きい言葉で戦わない

もう一つ決めたことがあります。大きいキーワードを捨てる。

この業界で検索数の多い言葉は、大手が押さえています。資本が違います。そこで勝負しても、クリック単価だけが上がって終わります。

だから、買う気がはっきりしている言葉だけに絞りました。用途、業種、細かい条件。検索する人の数は少ない。でも、そこにいるのは本気の人です。

姉妹サイトで同じやり方を試して、1件あたりの獲得単価を1万円前後まで下げた実績があります。だから自信を持って提案できました。

ここで、私自身の話を

実は私、この「絞る」がずっと苦手でした。

毎朝、だらだらとYouTubeを見ます。その中で気づいたことがあります。私が好きで見ているチャンネルは、登録者が万単位。一方、登録者が十万単位のチャンネルは、もっと大きいテーマを扱っていて、正直あまり面白くない。

つまり私は、「大きい市場に行かないと不安だ」と思いすぎていた。市場と一緒に落ちるのはごめんだ、と。だからテーマや業界を絞るのを、極端に嫌がってきました。

でも、好きなチャンネルを見ていて思ったのです。登録者数など、どうでもいい。成り立っていればいい。ファンがいればいい。

52歳になって、やっとここに来ました。自分の会社も、絞っていいのではないか。中小企業向け、法人向け、特定の道具。そのほうが、楽しそうだし、かっこいい。

広告のキーワードの話と、同じことです。大きいところで名前を知られるより、小さいところで確実に選ばれるほうがいい。

作り直しは、あとでいい

この会社には「サイトの全面作り直しは、来年の夏でいいです」と伝えました。

ただし1つだけ、先に直してもらうことにしました。スマホで見たときのページです。このサイトはパソコン用とスマホ用でURLが分かれていて、10年以上前の作りのままでした。

広告を出しても、受け皿がこれでは落ちます。クリックしてくれた人が、読みにくい画面にたどり着いて帰ってしまう。広告費を払って、帰ってもらうことになります。

だから順番はこうです。

  1. 1件いくらまで払えるかを決める
  2. 広告の受け皿になるページだけ、スマホ対応にする
  3. 買う気のある言葉に絞って、少額から出す
  4. 数字を見て増やすか減らすかを決める
  5. 成果が出てから、本格的な作り直しを考える

作り直しは、いちばん高い実験です。いちばん安い実験から始めます。

今日からできる一歩

電卓を出して、3行だけ計算してください。

注文1件の平均金額 → そのうち手元に残る額 → その3割

出てきた数字が、あなたの会社が1件の注文に払える上限です。

この数字を、広告の管理画面のメモ欄でも、手帳の表紙でもいいので書いておいてください。次に「この広告、高くないか」と思ったとき、迷わなくなります。

売上は、最後にクリックされた場所に全部乗る

売上は、最後にクリックされた場所に全部乗る

管理画面を開くと、お客さんが来た経路ごとの売上が並んでいます。あの表の読み方を、今日は一つだけお伝えします。

「このメールは千円台、この広告は数円です」

ある会社の分析資料に、こういう表が載っていました。

売上を、お客さんが来た経路ごとに割った数字です。メールから来た人は1件あたり千円台。ある広告から来た人は、数円。

400倍の差です。

この表を見た社長は、当然こう考えます。「メールは効いている。この広告は無駄だ。予算を移そう」

私は、そうではないと返信しました。この2つの数字は、そもそも測っている場所が違うからです。

売上は、最後に触った経路のものになる

アクセス解析や広告の管理画面の多くは、最後にクリックされた経路に、売上を全部乗せます。

たとえば、こういう流れを想像してください。

  1. 月曜。広告を見て、はじめてそのサイトを知る。会員登録をする
  2. 火曜から木曜。何もしない
  3. 翌週。届いたメールを開いて、リンクをクリックして注文する

この注文は、どこの手柄になるでしょうか。

メールです。最後にクリックされたのがメールだからです。最初に連れてきた広告の成績は、ゼロのまま。

これが、千円台と数円の正体です。広告が無駄だったのではなく、広告の手柄が全部メールに移っているだけです。

検討期間が長いほど、この歪みは大きくなる

この会社の数字を見ると、こうでした。

  • 購入の8割近くは、登録した日ではなく、あとから来訪し直したときに起きている
  • 登録から最初の注文まで、中央値で9日

9日空くということは、ほぼ全部の注文が「最後の経路」に吸い込まれるということです。

法人向けの商売は、だいたいこうなります。その場で決まりません。見て、社内で相談して、比べて、何日かたってから動く。検討期間が長い商売ほど、入口の広告は数字の上で不当に安く見えます。

そして、いちばん多くの新規を連れてきている入口が、いちばん「効いていない」ように見える。止めたくなるのも当然です。

「直接来た」の山は、たいてい誰かの手柄

もう一つ、見分け方があります。

解析画面に「直接流入」とか「ノーリファラー」という項目があります。ブックマークやURLの直打ち、アプリの中から来た人がここに入ります。この山が大きい会社は、要注意です。

その山の中身は、たいてい「前に何かで知って、今回は自分で来た人」です。つまり、誰かの手柄が名無しになって溜まっています。

ここが膨らんでいるのに、広告の数字が小さい。よくある形です。

では、どうするのか

1. 入口と出口を、別の物差しで見る

入口の広告は「何件の新規を連れてきたか」で見ます。売上では見ません。出口のメールやリピート施策は「売上」で見ます。

同じ物差しで並べると、必ず入口が負けます。並べないことです。

2. 最初の接点を、自分の台帳に残す

お客さんが登録したとき、または最初に問い合わせたときに、「どこから来たか」を顧客台帳に1項目足します。これで、9日後に買った人の売上を、最初の入口に戻せるようになります。

アクセス解析の数字ではこれができません。個人単位では追えませんし、データの保存期間にも限りがあります。自社の台帳に残すしかありません。

私の失敗談

ずっと前、自社のセミナー集客で同じことをやりました。

申込フォームの直前のページだけを見て、「このページからの申込が多い」「このページは無駄だ」と判断していました。無駄だと思って消したページが、実は最初に見つけてもらうための入口でした。消した月から、申込そのものが減りました。

最後のページだけを見ていたのです。出口の手柄を数えて、入口を削っていました。

今日からできる一歩

管理画面を開いて、「直接流入」の割合を見てください。

これが全体の3割を超えていたら、あなたの会社の広告やSNSは、数字の上で実力より安く見えています。その状態で予算を動かさないでください。

まず、最初の接点を台帳に残す。判断は、そのあとです。

AIが「これが原因です」と答えた。でも、確かめる方法がなかった

AIが「これが原因です」と答えた。でも、確かめる方法がなかった

AIに自社の数字を読ませる社長が、この1年で一気に増えました。分析は速くなりました。でも、新しい転び方も出てきました。

「原因は、これだと判断できます」

先日、ある社長から長いメールが届きました。

自分でAIを使い、自社の売上データと、サイトのアクセス解析をつないで分析したそうです。資料が4本。中身を読みました。正直、よくできています。数字の拾い方も、切り口も、私が手で作るより速い。

その最後に、こう書かれていました。

現在の新規獲得はこの広告が中心なので、購入率が下がった原因はこの広告だと判断できる。だから予算を別の広告に振り替えたい。

読んだ瞬間、私は手を止めました。

理由は一つです。その会社は、会員登録のときに「どこから来たか」を記録していません。

記録していないことは、あとからは分からない

AIは、渡されたデータの中でしか考えられません。ここを勘違いすると、あっさり転びます。

この会社の場合、こうなっています。

  • 会員登録した人が、どの広告から来たのかは、どこにも残っていない
  • 購入の8割近くは、登録した日ではなく、あとから訪問し直したときに起きている
  • 登録から最初の注文まで、中央値で9日かかる

つまり、9日後にもう一度サイトへ来て買った人の売上は、最初にその人を連れてきた広告の手柄としては、どこにも記録されないのです。

この状態で「原因はこの広告だ」と言うのは、防犯カメラのない部屋で犯人を決めるようなものです。結論が当たっているかどうか以前に、確かめる手段がありません。

止めようとしていたのは、新規の入口の4割だった

もう一つ、見過ごせない数字がありました。

その広告は、その会社の新規会員登録の4割強を作っています。いちばん多い入口です。ここを止めたら何が起きるか。新規が減ります。そして、購入率が上がったのか下がったのか、やはり分からないままです。

止めるという判断は、一瞬でできます。でも戻すのは難しい。広告は止めた瞬間に配信の学習が切れ、同じ成績には簡単には戻りません。

一方、流入元を記録する仕組みを入れるのは、数日でできます。

だから私は、順番をひっくり返しました

返信でお願いしたのは、今月はこの3つだけに絞ってください、という内容でした。

  1. 売上がいちばん落ちている商品カテゴリーの、落ちた理由を分解する(大口が離れたのか、商品が終わったのか、需要そのものが減ったのか)
  2. 会員登録のときに、どこから来たかを顧客台帳に保存する
  3. メールに計測の印をつける

広告の予算配分は、この3つが終わってからです。

順番の理由は単純です。取り返しのつく手から先に打つ。記録を足すのは、失敗しても何も壊れません。広告を止めるのは、失敗すると入口が消えます。

私も、同じことをやっていました

えらそうに書きましたが、自分の日記にはこう書いてあります。

改善ではなく、別のものを探してしまう。なぜそうなったのかという分析が弱いので、同じ過ちを繰り返す。

うまくいかなかったとき、私は原因を確かめる前に、別のやり方を探しに行きます。そのほうが気持ちがいいからです。原因を掘るのは地味で、しかも自分の失敗と向き合うことになります。

でも、なぜ外れたかを確かめないままでは、次も同じ外し方をします。実際、繰り返してきました。

AIを使うと、この癖がもっと速く回ります。答えらしいものが、数分で出てくるからです。速く出た答えほど、確かめる手段があるかを見てください。

今日からできる一歩

紙でもメモ帳でもいいので、1行だけ書いてください。

「いま止めようとしているもので、本当に良くなったかどうかを、あとから確かめられるか」

確かめられるなら、進めてください。確かめられないなら、止めるのは来月でいい。今月やることは、確かめるための記録を作ることです。

数字は、残しはじめた日からしか貯まりません。今日が、いちばん早い日です。

年に2回しか変わらない設備の台数を、自動集計にしようとしていた

年に2回しか変わらない設備の台数を、自動集計にしようとしていた

「これ、自動で更新できますか」

設備を百数十台持っている製造業の会社から、こう聞かれました。

新しく作るページの上のほうに、代表的な数字を出すことになっていました。全部で何台持っているか。そのうち特定の設備が何台か。工場の規模と技術力が一目で伝わる、いちばん目立つ場所です。

担当の方の質問はこうでした。

下の一覧と連動して、上の数字も自動で変わるようにできますか。手で直すと直し忘れそうなので。

もっともな心配です。技術的にも、できます。

私はこう答えました。

「手で書きましょう。そのほうが安くて、壊れません」

私が先に聞いたのは、たった1つ

自動にするかどうかを決める前に、私が確認したのはひとつだけです。

「その数字は、年に何回変わりますか」

答えは、年に2〜3回でした。

設備は毎日入れ替わるものではありません。年に数回、新しい機械が入る。古いものを外す。それだけです。

年に2〜3回のために、自動集計の仕組みを作る。作れば、その分の費用がかかります。仕組みが増えれば、壊れる箇所も増えます。将来サイトを触るときの制約にもなります。

一方、手で直すなら、費用はゼロです。年に2〜3回、管理画面で数字を打ち替えるだけ。5分で終わります。

計算するまでもありません。

自動にしていい作業、手で書くべき作業

私はこう分けています。

自動にする 手で書く
変わる回数 毎日・毎週変わる 年に数回しか変わらない
間違えたとき 誰も気づかない すぐ気づく
触る人 複数人が触る 1人しか触らない
例 受注データ、問い合わせの記録、在庫 会社の代表数字、料金表、あいさつ文

自動化は「面倒だから」で決めるものではありません。「回数が多いから」で決めるものです。

年に2回の作業を自動にしても、ラクになりません。ラクになるのは、毎日やっている作業だけです。

私も、仕組みを作りすぎて止まりました

偉そうに書いていますが、私は先週、まさにこれで止まっていました。

自分のやることリストを、4つの箱に分けて整理していました。きちんと分類された、立派なリストです。

ところが、まったく進まない。更新する気にもならない。

なぜかと考えて、気づきました。ひとつひとつのタスクの文が長すぎたのです。何をすればいいのかが、自分でもわからない。だから手がつかない。

そこで全部、「◯◯を◯◯する」という短い形に書き直しました。それだけです。仕組みは何も足していません。

すると、消せるイメージが湧きました。進められそうだと思えました。

私はこう思いました。こんなところでつまずいて「AIは使えない」「あのシステムは使えない」と言っている人は、きっと多いのだろうと。

道具のせいではありません。使える形に直していないだけです。

今日からできる一歩

いま「自動にしたい」と思っている作業を、ひとつ挙げてください。そして、こう数えてください。

これは、月に何回やっているか。

月に1回以下なら、自動にしなくていいです。手でやってください。
毎日やっているなら、迷わず自動にしてください。

数えれば、答えは勝手に出ます。

サイトを作り直す前に、いま載っている事例を数えた

サイトを作り直す前に、いま載っている事例を数えた

「古いから、作り直さないと」

サイトの相談で、いちばん多い言い方がこれです。

「うちのサイトはもう古いので、作り直さないとダメですよね」

その気持ちはよくわかります。自分の会社のサイトは、社長にとって見飽きたものです。見飽きたものは、古く見えます。

ただ、作り直しは高い買い物です。だから私は、先に数えることにしています。

ページを全部数えてみた

先日、ある会社のサイトを1ページずつ機械で読み込んで、全部数えました。

出てきた数字は、こうでした。

  • 全体で300ページ以上
  • そのうち、事例が150件以上
  • 事例の中身は、営繕工事・機械の修理・加工品・製作品の4種類

150件です。これは簡単に真似できる数ではありません。何年もかけて現場が積み上げてきたものです。

社長本人は、この数を正確には把握していませんでした。「けっこうあると思う」くらいの感覚でした。

10ページのうち、7ページが数行だけだった

ところが、中身を見て驚きました。

300ページ以上のうち、7割以上のページが、100語に満たない分量でした。写真が1枚あって、その下に数行の説明。ほとんどのページがこの形でした。

これでは検索にも出てきませんし、読んだ人の心も動きません。

でも、逆に言えばこうです。

資産はもうある。足りないのは、厚みだけだ。

足すと決めたのは、3行だけ

私が提案したのは、新しいページを作ることではありませんでした。

既存の事例1件ずつに、3行から4行を足すことです。

  1. 何に困っていたのか(部品が廃番になって手に入らない、など)
  2. なぜ他に頼めなかったのか(ロット100個からと断られた、など)
  3. どう解決したのか(現物から図面を起こして1個だけ作った、など)

これだけです。写真は今あるものを使います。新しく撮りません。

150件の事例が、それぞれ「困りごとの物語」になります。検索で拾われる言葉も自然に増えます。何より、読んだ人が「うちと同じだ」と気づけます。

作り直すより、はるかに安く、はるかに早い。

なぜ、社長は作り直すほうを選んでしまうのか

理由はひとつだと思っています。いま自社サイトに載っている事例を、数えていないからです。

数えていないと、「たいしたものはない」と思い込みます。思い込むと、ゼロから作りたくなります。ゼロから作れば、お金も時間も何倍もかかります。

私自身、これをやりました。

先日、会社の口座残高を見て青くなりました。思っていたより大幅に減っていたのです。慌てて中身を調べたら、把握していた支出のほかに、見えていない固定費がかなりありました。

そのとき私は、オフィスを広げようとしていました。採用も進めようとしていました。

数えていなかったから、「新しく増やす」ほうに行こうとしていたのです。数えた結果、今やるべきなのは増やすことではなく、いまお客様に届くものを厚くすることだと気づきました。

サイトの事例も、会社のお金も、同じ形です。

今日からできる一歩

自社サイトのページ数を数えてください。それだけでいいです。

  • 事例は何件ありますか
  • そのうち、3行以上の説明があるものは何件ですか

数えてから、作るか足すかを決めてください。たいていの会社は、作らなくていいものを作ろうとしています。

あの会社のサイトを調べたら、検索から人は来ていなかった

「こういうサイトにしたいんです」

先日、工場まわりの修理や部品加工を請け負っている会社から、サイトを作り直したいという相談を受けました。

推進役の方は、参考サイトを2つ用意していました。どちらも同業のサイトです。ひとつは「同じ型で作られていて差別化できない例」。もうひとつは「見た目が全然違って、こういうのをイメージしている例」。

資料はよくできていました。課題の整理も的確でした。私はそこで、いったん止めました。

作り直す前に、この2つのサイトに実際どれくらい人が来ているのかを調べさせてください、とお願いしました。

調べるのに、1日もかかりません

検索から何人来ているか。どの言葉で来ているか。どのページに着地しているか。これは外から測れます。相手の許可も要りません。専用の道具を使えば、半日で出ます。

出てきた結果は、こうでした。

「こういうのをイメージしている」と言われた、見た目のきれいなサイト。検索で順位がついている言葉は、ゼロ件でした。 検索から人が来ていません。見た目の参考にはなりますが、成果の手本ではありませんでした。

そして相談元の自社サイトも、同じくゼロ件でした。これは薄々わかっていたことです。

人を集めていたのは、トップページではなかった

面白かったのは、3つ目です。「同じ型で差別化できない」と否定されていたほうのサイト。

こちらは、いくつかの言葉で検索1位を取っていました。月に何百件と検索されている言葉です。

では、その人たちはどのページに着地していたのか。

トップページではありません。お困りごとを並べた、あの縦長のページでもありません。

「お役立ち情報」の中にある、用語解説の記事でした。「この部品とこの部品は何が違うのか」という、現場の人しか調べないような地味な記事です。

トップページで順位がついていた言葉もありました。ただ、その言葉は検索数がほぼゼロでした。つまり、順位はあっても人は来ていません。

批判は当たっていた。ただし理由が違った

「この型では差別化できない」という指摘は、結果として正しかったのです。

ただし理由が違います。構造が悪いのではありません。そもそもその部分は、検索から人を集めていなかったのです。人を集めていたのは、誰も注目していない地味な記事のほうでした。

もしこれを測らずに進めていたら、どうなっていたか。見た目のきれいな、けれど人の来ないサイトを、お金をかけて作っていたはずです。しかも「これで集客できる」と信じたまま。

私も、見た目から入って失敗しました

偉そうに書いていますが、私も同じ間違いを何度もしています。

先日、久しぶりに会った知人が、ホームページを500万円で作ったと聞きました。正直、高すぎると思いました。でも自分を振り返れば、人のことは言えません。私も昔は、格好いいサイトを作ることが仕事だと思っていました。

作ったあとで「で、これで何人来るんですか」と聞かれて、答えられない。そういう時期がありました。

測ってから作れば、こうはなりません。

今日からできる一歩

真似したいサイトを、ひとつ挙げてください。そして、こう考えてみてください。

このサイトは、どの言葉で、どのページに人を集めているのか。

答えられないなら、まだ真似する段階ではありません。

測るのは1日です。作り直すのは半年です。安いほうから先にやってください。