相見積もりで、値段で負ける。悔しいので次は安く出す。すると今度は「この金額で本当に大丈夫ですか」と疑われる。安くしても負ける。この繰り返しに入っている会社は、けっこう多いと思います。
先日、ある製造業のサイトをつくり直す仕事が決まりました。工場で使う型をつくっている会社です。こちらの見積は、他社が出すと想定される金額より3割ほど安いものでした。普通なら疑われる金額です。それでも決まりました。
何をしたか。メールの1行目に「値段で負け続けています」と書きました。
今日はこの話を書きます。
- 安い見積は、黙って出すと疑われる
- 私が書いた3つのこと
- なぜ、弱みを先に出すと通るのか
- 紹介してくれる人には、説明しやすい材料を渡す
- 今日からできる一歩
安い見積は、黙って出すと疑われる
当時、私は値段で連続して失注していました。正直、焦っていました。
その状態で、他社より3割安い金額を出す。相手の立場で考えてみてください。「なぜこの会社はこんなに安いのか」。浮かぶ答えは2つです。ひとつは「安くできる工夫がある」。もうひとつは「手を抜くつもりだ」。
黙って安い金額だけ出すと、相手は後者で考えます。これは相手が疑い深いからではありません。理由が書いていないからです。人は、説明のない安さを警戒します。スーパーで極端に安い肉を見たときと同じです。
私が書いた3つのこと
1.「このところ、値段で負け続けています」
いちばん言いたくないことを先に書きました。かっこ悪い話です。でもこれを書くと、次の金額の説明が「言い訳」ではなく「事情」として読まれます。
2.「安くできる理由は、作り方を変えたからです」
ここは具体的に書きました。1つのサイトに4〜5人を入れていたのを、2〜3人に減らしました。毎回ゼロから考えていた作業を型にはめました。下作業はAIにやらせるようにしました。
「効率化しました」とは書きません。何人が何人になったのかを書きます。桁が出ないと、人は信じません。
3.「品質は変わりません。作り方を変えただけです」
最後は言い切りました。「変わらないと思います」ではありません。「変わりません」です。ここで濁すと、1と2がすべて無駄になります。
なぜ、弱みを先に出すと通るのか
相手がいちばん怖いのは、安い金額そのものではありません。あとで何かが出てくることです。追加費用、手抜き、途中で音信不通。だから相手は「この会社は何を隠しているか」を探しています。
こちらが先に、いちばん都合の悪いことを出す。すると相手の探す作業が終わります。隠しごとを探す相手から、一緒に考える相手に変わります。
この案件では、相手の担当者の方から「正直に言ってくれたのがすごく嬉しい」という反応をいただきました。安い金額への不信ではなく、共感になった瞬間です。
紹介してくれる人には、説明しやすい材料を渡す
もうひとつ、この案件でやったことがあります。紹介してくれた人が社内で説明しやすい形にして渡したことです。
理由を5つ並べませんでした。2つに絞りました。人数を減らしたこと、型にはめたこと。この2つだけです。
紹介者は、私の代わりに社内で説明してくれる人です。その人が覚えられない説明を渡しても、伝わりません。2つなら覚えられます。5つは無理です。結果として、このメールは1か月後の打ち合わせまで材料として使われ続けました。
変える前と、変えた後
- 安い金額だけを出す → 負けている事実を先に出す
- 「効率化しました」と書く → 「4〜5人を2〜3人にしました」と書く
- 「品質は落ちないと思います」 → 「品質は変わりません」
- 理由を5つ並べる → 理由を2つに絞る
今日からできる一歩
次に見積を出すとき、金額の前に1行だけ足してください。
この金額にできる理由は、◯◯を◯◯に変えたからです。品質は変わりません。
◯◯には、必ず数字を入れてください。人数、工程の数、日数。何でもいいですが、桁を出します。「安いですが大丈夫です」は、何の説明にもなっていません。
そして、いちばん都合の悪いことを1つ、自分から先に言ってみてください。負けが続いていること。人手が足りないこと。得意でない分野があること。隠しても、相手はいずれ気づきます。先に言えば材料になり、あとで出れば裏切りになります。同じ事実です。順番だけが違います。