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不安を煽らないと売れないのか。人見知りの社長への答え

私は、煽る営業が好きではありません。

「今やらないと損しますよ」「他社はもう始めています」——ああいう言い方を、自分ではしたくない。

でも、そう言われないと動けない人がいるのも事実

ただ、正直に言うと、迷いはありました。実際に、そう言われないと動けない人がいるからです。

こちらがどれだけ丁寧に説明しても「そのうちやります」で止まる。半年後にまた同じ話をしている。そういう場面を何度も見てきました。

だから私は長いこと、この問いを持っていました。煽らないと売れないのか。

自分の買い物を観察してわかったこと

先日、休みの日に自分の買い物を観察していて、答えらしきものが出ました。

安いのに買わなかったもの

その日、家族でアウトレットに行きました。結局、何も買っていません。安いことは安い。でも「今ここで買う理由」がなかった。送料を払ってでもネットで買えばいい、と思ってしまいました。

高いのに即決したもの

ところが同じ日の朝、私はナイキのゴルフシューズを血眼になって探して、即決しています。アウトレットの商品より高いのに、です。

誰にも煽られていません。広告も見ていない。期間限定でもない。

では、なぜ即決したのか。

そのシューズの良さを、私はもう知っていたからです。履いたときの感じも、ラウンド後の足の楽さも、全部わかっている。だから「またあれがしたい」とだけ思って、探して、買いました。

人を動かす本体は「恐怖」ではなく「再現したい体験」

ここに答えがありました。

人を動かす本体は、恐怖ではありません。「またあの体験がしたい」という気持ちです。

煽りは、その気持ちがすでにある人の背中を、最後にひと押しするだけのものです。気持ちがない人をいくら押しても、動きません。動いたとしても、あとで恨まれます。

実際にやってみた:見せたのは価格ではなく画面だった

これがわかってから、私は自分の商談を変えました。

先日、ある金属加工の会社との商談で、決裁が止まっていました。

いつもの私なら、ここで押すか、金額を下げます。今回はどちらもしませんでした。

代わりに作ったのが「公開したあと、社内の人が触る更新画面のイメージ」です。ここに写真を入れるとこう出ます。空欄は自動で詰まります。公開日を先に決めて予約もできます——そういう地味な絵です。

見せた瞬間、担当の方の反応が変わりました。

「これはすごくいい」
「私以外が作業する場合も分かりやすい」
「導入予定の日が決まっているなら、今から仕込んでおけますね」

この最後の一言が大事です。もう使っている前提で話し始めている。

止まっていた理由は金額ではありませんでした。「自分以外の人でも、これを回せるのか」という不安です。そして、その不安を消したのは、値引きでも脅しでもなく、使っている場面の絵でした。

そこから話は一気に前に進み、こちらが売り込んでいない別の相談まで先方から出てきました。

売り込まなくても、増えたのです。

煽りをどこに置くか。順番の話

私はこう整理しました。主軸は「良い体験をありありと想像させること」。煽りは最後の一押し。

用意はしておく。でも先に出さない。順番を守れば、ほとんどの場合、出す必要すらありません。

私自身、人見知りです。返品ができない。パリで4時間ユーチューブを見て過ごした。道を聞くよりグーグルマップを開く。そういう人間です。

その私が2003年に横浜で独立して月商8万円、2週間で1件も受注できず、そこから10日間、840円の投資で16社・64万円の受注をつくりました。押したからではありません。相手が「これなら自分にもできそうだ」と思える形にして見せたからです。

今日からできる一歩:自社の「また体験したいこと」を1つ書き出す

自社のサービスについて「お客さまがまた体験したくなること」を、1つだけ書き出してください。

機能でも実績でもありません。導入したあと、お客さまの毎日の中で「これ、楽だな」と感じる瞬間です。

それが書けたら、次の商談で、その瞬間を絵か言葉で見せてください。

煽らなくていい。想像してもらえれば、それが買う理由になります。

提案書を厚くしても決まらない。変えるべきは「主役」だった

担当者は「良いですね」と言っている。感触も悪くない。なのに、決まらない。

中小企業の社長なら、一度は経験があるはずです。

私は「厚くする」を10年やってきた

私はこの状態を、長いこと「押しが足りない」せいだと思っていました。だから提案書を厚くしてきました。

項目を増やす、根拠を足す、比較表を作る

項目を増やし、根拠を足し、他社との比較表を作る。もっと丁寧に説明すれば伝わるはずだ、と思っていました。

それでも動かないときは、金額を下げていた

これを10年以上やってきました。そして最後はいつも値引きで決まる。決まったのに、なぜか嬉しくない。

提案書の主役を入れ替えた

先日、ある金属加工の会社との商談で、そのやり方が間違っていたことがはっきりしました。

提案書は出していました。見積書も出していました。担当の方の評価も悪くない。でも決裁が止まっていました。

いつもの私なら、ここで説明を足すか、金額を下げます。

見せたのは完成品ではなく「更新画面」

今回はやりませんでした。代わりに作ったのは、「公開したあと、社内の人が触る更新画面のイメージ」です。

ここに写真を入れると、ここにこう出ます。空欄があると自動で詰まります。下書きで保存できます。公開日を先に決めて予約もできます——そういう、地味な絵です。

見せた瞬間、反応が変わりました。

「これはすごくいい」
「更新も分かりやすい項目で分けていただいている」
「私以外が作業する場合も分かりやすい」
「導入予定の日が決まっているなら、今から仕込んでおけますね」

相手が言葉にしていなかった不安に、直接あたった

ここで私はやっと理解しました。

止まっていた理由は金額ではなかった。「自分以外の人でも、これを回せるのか」という不安でした。

そしてこの不安は、一度も口に出されていませんでした。

考えてみれば当然です。担当の方の立場からすると、社内で通したあとに困るのは自分です。作って終わりではない。運用が始まってからのほうが長い。その長い時間を想像したときに不安があるなら、決裁の判子は押せません。

提案書の主役は「これから作るもの」でした。相手が知りたかったのは「使っているところ」でした。

主役を入れ替えたら、話が動きました。決裁は「多分このまま通る」に変わり、しかもこちらが売り込んでいない別の相談まで、先方から自然に出てきました。

なぜ金額を先に下げてはいけないのか

もし私が先に金額を下げていたら、どうなっていたか。おそらく通ったでしょう。でも不安は残ったままです。そして「安くしてくれる会社」という記憶だけが残る。次の案件も値引きから始まります。

「買わない理由」を潰す前に、「使っている自分」を見せる。この順序を守るだけで、値引きの回数は減ります。

もうひとつの例:設定を直す前に運用を直した

同じ順序の話を、もう一件。

ある制作会社で、問い合わせの自動振り分けが動かないという相談がありました。担当の方は、設定画面の条件を何度も直していました。

私が最初にやったのは、条件を直すことではありません。画面を見せてもらうことでした。

すると、手前に原因がありました。全部のメールを控えに入れて転送する運用になっていたため、そもそも条件が成立しない状態だったのです。設定画面をいくら直しても、絶対に動きません。

そこで提案したのは、受信するアドレスを一本にまとめることでした。仕組みの前に、運用の形を直す。

「すっきりしました」と言っていただきました。

ここでも順序です。基本の形を先に作り、細かい例外は後。逆にやると、直しても直しても動かない状態が続きます。

私自身、2003年に横浜で独立して月商8万円、2週間で1件も受注できませんでした。そこから10日間、840円の投資で16社・64万円の受注をつくりました。あのとき効いたのも、立派な提案書ではありません。相手が「これなら自分にもできそうだ」と思える形にして見せたことでした。

今日からできる一歩:提案書の1ページ目を差し替える

提案書の1ページ目を差し替えてください。

今そこにあるのが会社紹介なら、外します。代わりに置くのは、導入したあとの一場面です。誰が、どの画面で、何をするか。手描きの絵でかまいません。

これだけで、相手の頭の中で提案書の主役が入れ替わります。

説明を厚くするのは、そのあとです。

アウトレットで何も買わなかった私が、ゴルフシューズだけ即決した理由

担当者は「良いですね」と言っている。感触も悪くない。なのに、決まらない。

中小企業の社長なら、一度は経験があるはずです。

アウトレットで、私は何も買わなかった

先日、家族で関西のアウトレットに行きました。

結論から言うと、何も買いませんでした。

安いのに、買う理由がなかった

安いことは安い。でも「今ここで買う理由」が見つからなかった。売れ残りが安く並んでいるのかと思っていたら、そうではなく、アウトレット用に企画された一段下のものが安く並んでいる。店によっては量販店と同じ値段でした。

送料を払ってでもネットでいい、と思ってしまった

それで私はこう思いました。送料を払ってでも、ネットで買えばいい。

同じ日、ゴルフシューズは血眼になって探して即決した

ところが同じ日の朝、私は別の買い物をしていました。ナイキのゴルフシューズです。26.5センチ、フリーというモデル。血眼になって探して、見つけた瞬間に比較して、即、買いました。

値段はアウトレットの商品より高い。それでも一瞬で決めました。

違いは値段ではなかった

このシューズの良さを、私はもう知っていたからです。履いたときの感じも、ラウンド後の足の楽さも、全部わかっている。だから「またあの体験がしたい」とだけ思って、探して、買った。

「またあの体験がしたい」だけで人は動く

安いから買ったのではない。同じ体験をもう一度したかったから買った。

自分の見積書を見返して、青くなった

その帰り道、私は自分の見積書のことを考えて、少し青くなりました。

私は毎月、お客さまに見積書を出します。会社の紹介があり、課題の整理があり、やることが並び、金額が入っている。よくできた見積書だと思います。

でも、そこに「今、ここで注文しなければならない理由」は書いてあるか。

ありませんでした。

正直に言えば、私はずっと「良い提案をすれば伝わる」と思っていました。だから提案書を厚くしてきた。項目を増やし、根拠を足し、比較表を作った。それでも返事が来ないときは、最後は金額を下げていた。

順番が逆でした。

提案書ではなく「更新画面」を見せたら、決裁が動いた

先日、ある金属加工の会社との商談で、それがはっきりしました。

止まっていた理由は金額ではなかった

提案書も見積書も出していました。内容にも自信があった。でも決裁が止まっていた。

このとき、私は金額を下げませんでした。代わりに作ったのは、公開したあとに社内の人が触る「更新画面」のイメージです。ここをこう入力すると、こう表示されます、という絵です。

見せた瞬間、担当の方の反応が変わりました。

「これはすごくいい」
「私以外が作業する場合も分かりやすい」
「導入予定の日が決まっているなら、今から仕込んでおけますね」

使っている自分が見えた瞬間、話が前に進む

止まっていた本当の理由は、金額ではなかったのです。「自分以外の人でもこれを回せるのか」という不安でした。誰も口に出していなかった不安です。

更新画面のイメージは、その不安に直接答えました。そして担当の方は、使っている自分を想像し始めた。

そこから話は一気に前に進みました。決裁は「多分このまま通る」に変わり、しかもこちらが売り込んでもいない別の相談まで、先方から出てきました。

なぜ、先に値引きをしてはいけないのか

順序が大事です。

もし私が先に値引きをしていたら、どうなっていたか。おそらく金額は通ったでしょう。でも不安は残ったままです。そして「安くしてくれる会社」という記憶だけが残る。次も値引きから始まります。

「買わない理由」を潰す前に、「使っている自分」を見せる。これが順序です。

ビフォー(現状の問題) 実施(打った手) アフター(結果) なぜその順序にしたか
提案書も見積書も出したのに、決裁が止まっていた。本当に気にされていたのは金額ではなく「自分以外の人でも更新できるか」だった 提案書の説明を厚くするのではなく、公開後に社内の人が触る更新画面のイメージを作って見せた 「これはすごくいい」「私以外が作業する場合も分かりやすい」。決裁は「多分このまま通る」に。売り込んでいない別の相談も先方から出てきた 止まっていた理由が金額ではなかったから、値引きに行かなかった。逆順にすると値引き合戦になり、決まっても利益が残らない

私自身、2003年に横浜で独立して月商8万円、2週間で1件も受注できませんでした。そこから10日間、840円の投資で16社・64万円の受注をつくりました。あのとき効いたのも、値引きでも根性でもありません。相手が「これなら自分にもできそうだ」と思える形にして見せたことでした。

今日からできる一歩:見積書に1ページ足す

では、今日から何をするか。

ひとつだけ提案します。見積書に1ページ足してください。

足すのは、価格の内訳でも実績一覧でもありません。「導入したあと、お客さまの会社の誰が、どの画面で、何をするか」の絵です。手描きでもかまいません。

パンフレットではなく、使っている場面です。買う前の説明ではなく、買ったあとの日常です。

それを見せたとき、相手の目が動いたら、そこが買う理由が生まれた瞬間です。

まとめ:煽らなくていい。想像してもらえればいい

私は「買わないと損しますよ」と脅す売り方が好きではありません。今もそう思っています。ただ、実際にそう言われないと動けない人がいることも事実です。

だから私はこう整理することにしました。主軸は「良い体験を想像させること」。脅しは最後の一押しにすぎない。

順番を間違えなければ、脅す必要はほとんどありません。