毎週の情報整理メモです。
この1週間(9月28日〜10月4日)で、中小企業の経営に実際に効く動きは多くなかった。ただし、期限と金額に直結するものが1件ある。そこから順に並べる。
1. 補助金:次の締切は10月30日。対象ツールも増えた
何が変わったか
「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金)の次回締切は、2026年10月30日(金)17:00である。交付決定は12月10日(木)予定、事業の実施期間は交付決定後から2027年5月31日(月)17:00までの予定となっている。
あわせて9月30日、ゾーホージャパンが「Zoho Mail」(プレミアムプラン)「Zoho Connect」(アルティメットプラン)「Zoho People」(プレミアムプラン)の3製品を、同補助金の通常枠の対象ツールとして登録したと発表した。
補助の条件は次のとおりである。
- 補助率はクラウド利用料の2分の1以内。所定の賃金要件を満たす場合は3分の2以内
- 対象は最大2年分
- 補助額は導入する業務プロセス数で決まる。1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下
- 年間契約プランのみが対象
- Zoho Mailは単体では申請できない。他の対象ツールとの組み合わせが必要
そしてもっとも事故が起きやすい一点。交付決定前に契約・発注・支払いを行った場合、補助の対象にならない。「先に導入して、後から申請する」は通らない。
なぜ重要か
10月30日まで、実質3週間強しかない。しかも発注は交付決定(12月10日予定)を待つ必要があるため、「年内に導入して年明けから使い始める」という段取りを今から組まないと、1月以降の予算に流れてしまう。
もう一つ。10月1日から最低賃金が改定された。賃上げを予定している会社なら、補助率が2分の1ではなく3分の2になる可能性がある。自己負担が3分の1で済むかどうかは、提案の通りやすさを大きく変える。賃金要件の詳細は公募要領で確認が必要だ。
なお、4次締切分の交付決定日は10月7日とする情報があるが、事務局の公式スケジュールページには確定した公募回のみが掲載されており、この日付は確認できなかった(二次情報。未確認)。
打ち手
- 既存の顧客・取引先のうち、年間契約のクラウドを使っていて、かつ賃上げの予定がある会社を書き出す
- その会社に「10月30日締切」「発注は交付決定後」の2点だけ先に伝える。制度の説明は後でよい
- 見積と申請書類の着手日を、今週のうちにカレンダーに入れる
補助金の締切・金額・要件は変更されることがあるため、必ず公式サイトでご確認ください。公式スケジュール:https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/
2. Googleのスパム対策が進行中。順位が動いた心当たりがあるなら、今が見るとき
何が変わったか
Googleは9月24日に「September 2026 spam update」の展開を開始した。全世界・全言語が対象で、完了までに最大2週間かかるとしている。10月5日時点で、Google公式のランキング更新履歴に完了の記載はない。まだ動いている最中とみられる。
なぜ重要か
スパムアップデートは、コアアップデートと違って「検索の評価軸が変わる」ものではない。Googleのスパムに関する方針に反する手法を取っているサイトを下げるものである。
問題は、自社で心当たりがなくても影響を受ける場合があることだ。たとえば過去に業者に依頼した被リンク、大量生成した薄いページ、閉鎖したサイトから引き継いだドメイン。こうした「昔の施策」が残っていると、ここで出てくる。
打ち手
9月24日を境に、自然検索からの流入が落ちていないかを見る。落ちていた場合、まず疑うのは順位計測ツールではなくSearch Consoleの実データである。そして原因を探す前に、いま出している広告や問い合わせ経路が止まっていないかを確認する。検索が落ちているときに広告まで止まっていると、売上への打撃が二重になる。
3. 「AIに引用されること」が、広告商品として売られ始めた
何が変わったか
9月29日、朝日新聞社が生成AI検索時代に向けた新しい広告メニュー「AIO/GEOタイアップ」の提供を開始した。asahi.comで記事を配信し、記事公開の前後でAIによる言及・引用がどう変わったかをレポートするというものだ。
なぜ重要か
これまで検索対策の目標は「順位」だった。それが「AIの回答のなかで名前が出るか」に移りつつある。その変化が、大手メディアの正式な商品として値付けされた。流れが本物になりつつある証拠である。
ただし冷静に見ておきたい。これは広告枠の販売であって、検索の仕様変更ではない。中小企業がこの枠を買えるかというと、現実的には難しい会社が多いだろう。
打ち手
枠を買う話ではなく、無料でできることから手を付けるのが先である。
- 社名・サービス名の表記を、サイト・SNS・名刺・請求書まで全部そろえる。「株式会社○○」「○○(カタカナ)」が混在していると、AIは同じ会社だと判断しづらい
- 自社でしか出せない数字(施工実績、対応件数、価格の実例)を、1ページにまとめて公開する
- 他社の記事の要約ではなく、自社で測った一次情報を書く
地味だが、これは順位対策とAI対策の両方に効く。
4. CRM市場:中小企業向けに、また一社入ってきた
何が変わったか
9月28日、Consilegy合同会社が中小企業向けCRM「Revenue CRM」の正式提供を開始した。価格は月額3,000円/アカウント(税抜)から。名刺を撮れば連絡先ができる、商談を自動で文字起こしして要点と次のアクションを抜き出す、議事録からタスクを作る、といったAI機能を備える。175本の自動化ワークフローと業種別の初期設定が済んだ状態で提供されるという。
なぜ重要か
注目すべきは価格ではない。訴求の軸である。この製品は「CRMのための仕事を減らす」と言っている。入力・設定・運用そのものを敵に置いた。
CRMが使われなくなる理由は、機能が足りないからではない。入力が面倒で、設定が終わらず、現場が触らないからだ。そこを正面から突いてきた会社が出てきたということは、「多機能・低価格」だけでは選ばれなくなるという意味でもある。
打ち手
すでにCRMを入れている会社は、今月の入力率を見てほしい。営業担当が週に何件登録しているか。ゼロに近いなら、ツールを替える前に入力の手間を削る設定から見直すほうが早い。導入を検討中なら、比較表の機能数ではなく「初期設定が済んだ状態で渡してもらえるか」を聞くべきである。
5. 今週は大きな動きがなかったもの
正直に書いておく。Salesforce、HubSpot、kintone、SATORIといった主要なCRM・MAについて、この1週間で経営判断に関わる発表は確認できなかった。価格改定も仕様変更の告知も見当たらない。
Google広告・Meta広告についても同様で、中小企業の運用に直接影響する公式の告知はこの期間には出ていない。
今週やるなら、この3つ
- 補助金の候補を書き出す。年間契約のクラウドを使っていて賃上げ予定のある会社を、今週のうちにリスト化する。10月30日17:00締切。発注は交付決定後(12月10日予定)であることを先に伝える
- 9月24日以降の自然検索流入を確認する。Search Consoleで、スパムアップデート開始日の前後を比べる。落ちていれば原因を探すより先に、問い合わせ経路が生きているかを見る
- 社名・サービス名の表記をそろえる。サイト、SNS、名刺、見積書。費用はかからないが、AIに拾われるかどうかに効く
1と2は期限がある。3は期限がないので、1と2が終わってからでよい。期限のあるほうから手を付ける。これが一番間違いにくい順番である。
出典:
中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール」
https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/
ゾーホージャパン「『Zoho Mail』『Zoho Connect』『Zoho People』が『デジタル化・AI導入補助金2026』の対象ツールに登録」(2026年9月30日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000140.000101685.html
Google「Google Search ranking updates」(September 2026 spam update・2026年9月24日開始)
https://status.search.google.com/products/rGHU1u87FJnkP6W2GwMi/history
GameBusiness.jp「朝日新聞社、生成AI検索時代の新広告メニュー『AIO/GEOタイアップ』を提供開始」(2026年9月29日)
https://www.gamebusiness.jp/article/2026/09/29/28161.html
Consilegy合同会社「中小企業向けCRM『Revenue CRM』正式提供開始」(2026年9月28日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000191457.html
厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(2026年10月1日以降順次発効)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/